心をつたう 言の葉を紡ぐ
大和の伝統工芸

和紙や墨、筆などの文具の歴史を紐解くと、仏教と深い関係があることがわかります。
『日本書記』の記述によると、611年に高句麗の僧である曇徴(どんちょう)から、紙とともに墨づくりの技法が伝わりました。
写経などのため、僧侶たちは必要に迫られ、自分たちでも墨などの生産を行っていたのです。

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今も9割以上のシェアを持つ奈良の「墨」

奈良で製造される奈良墨のほとんどは、菜種油などの植物性の油を燃やして採取する油煙からつくる「油煙墨」が主流。室町時代に興福寺二諦坊の燈明の煤を集めて墨をつくったことが油煙墨のはじまりとされています。興福寺などの寺院を中心に、奈良墨の製造がさかんに行われてきました。

江戸時代初期から中期にかけて、奈良盆地で菜種作りが盛んであったことも、菜種油を原料とする墨づくりが続いてきた理由のひとつでしょう。天正年間になって松井道珍(古梅園の始祖)が奈良墨の声価を高め、その後、奈良に製墨所が相次いで誕生。全国各地の優秀な技術や工人が集まって来ることになり、今日でも奈良県は墨の全国シェア9割を誇っています。

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奈良県吉野地方につたわる「手漉き和紙」

和紙の歴史は古く、「大海人皇子が養蚕と共に村に伝えたのが始まり」と言われています。
優れた紙が生まれる条件は、美しい空気と清らかな水にあります。吉野川の清流が目前に迫る山あいは、紙漉きにとっては理想的な山里といえるでしょう。

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吉野には文化財指定を受けた紙が3種類あります。
「宇陀紙(うだがみ)」は吉野でしか採取できない白土を混ぜ入れて漉いた和紙で、やわらかみがあって虫がつきにくいのが特徴です。丸めても戻らない塑性を持ち、静かにそっと納まります。
「美栖紙(みすがみ)」は漉いた紙をすぐ板に張り付ける簀伏せ(すぶせ)という手法を用いることで、やわらかみがあって、湿度の変化があっても伸縮しません。表紙用中裏紙として欠かすことのできない和紙です。
「吉野紙」は「美栖紙」と同じように簀伏せをします。薄くきめ細かいので、漆を濾すときになくてはならない紙です。

日本独自の「和紙」の原料であるコウゾの皮は、寒中の澄み切った水にさらすのが良いとされています。コウゾを吉野川の清流にさらし、一枚一枚丹念に漉いた和紙が庭先に干される様は、吉野の冬の風物詩です。

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奈良は「筆」づくりの発祥地

平安時代に遣唐使として弘法大師(空海)が中国に渡った際に、毛筆づくりの技法を持ち帰り、大和国の坂井清川という人物に伝承をしました。
これが奈良筆、および日本においての筆づくりの最初であると云われています。

奈良筆の特徴は、リス、ムササビ、イタチ、タヌキ、ヒツジなど、十数種類の動物の毛を原料としていること。弾力や長さなど異なる毛質を巧みに組み合わせる「練り混ぜ法(ねりまぜほう)」という伝統的な技法で作り上げています。
原料となる獣毛を別々に水に浸して固め、それぞれの毛質によって、配分や寸法を決めます。
筆匠(ひっしょう)たちが、毛の特質を読んで修整を繰り返しながら、何度も練り混ぜることで、絶妙な穂先に仕上がるのです。

現代では鉛筆やボールペンにとってかわられつつある文具ですが、硯で墨を擦り、しずかに筆を引いてみれば文字を書くひとときは、自分と向き合ったり、心の平安を得たりするひとときのに最適な時間となることでしょう。

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香り墨は、見た目の美しさもさることながら、香りも楽しめる逸品。こちらでは、奈良らしい鹿柄をピックアップ。使うのがもったいなくなる可愛らしさですね。

松壽堂Shōjyudō

Address
奈良県奈良市東城戸町10
Tel
0742-22-3023
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自然のものを用いて丹念に漉かれた和紙製品は、どれもひと味違う風合いに。商品を手に取りながら、お気に入りを見つけるのも楽しみ方の一つ。

植和紙工房Ue Washikōbō

Address
奈良県吉野郡吉野町南大野237-1
Tel
0746-36-6134
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古来の筆を手に書に打ち込めば、遠いはじまりの時代に思いを馳せ、ひとつひとつの字が生まれた背景さえも味わうことができることでしょう。

あかしや古来の筆を手に書に打ち込めば、遠いはじまりの時代に思いを馳せ、ひとつひとつの字が生まれた背景さえも味わうことができることでしょう。

Address
奈良県奈良市南新町78-1
Tel
0742-33-6181
Web
http://www.akashiya-fude.co.jp/index.php

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