大人のこだわり心をくすぐる
自然×職人技の“わび”と“さび”

松江藩七代目藩主、松平治郷(まつだいら はるさと)は、若き藩主として財政を立て直したその功績が目立ちますが、同時に時代を代表する茶人でもありました。10代から茶を学び始めた松平治郷は、隠居後に「不昧(ふまい)」を名乗り、石州流を基本にさまざまな流派に接し、独自の不昧流を確立するほどまでになります。
没後200年以上経った今も、出雲がお茶どころのひとつとして名声を得ているのは彼の功績によるところが大きいのではないでしょうか。

不昧公は、当時の茶の湯文化が形式や道具だけに執着し、町人たちに遊びや芸事のように扱われることを嫌い、“わび”“さび”を徹底して求めました。茶道具への審美眼にも定評があり、藩外へ流出を続けていた茶道具の保存に力を入れました。また、陶芸や漆工、木工の職人には高い技術を求め、自分好みの美術工芸品を作らせたと伝えられています。
この本質を極める精神性が現代まで続く出雲地方の技と伝統に息づいているとも言えるでしょう。

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正倉院の宝物にもある神秘の銘木「黒柿」

現代出雲の木芸は、栗や欅など自然の木肌を生かした風合いが特長的です。特に神秘の名木として知られる「黒柿」から作られる作品は秀逸で、木肌のなかに黒や赤茶、翡翠などさまざまな色合いが絶妙に混ざり合い、まさに自然の芸術というべき魅力があります。
時代を遡ってみると、正倉院に納められた調度品のなかにも、厨子や供物台、馬具などの黒柿を使った作品が多くみられることから、いかに古くからその価値が高く評価されてきたことが分かります。

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その魅力をいまに伝え、名品を生み出しつづけているのが出雲市内にある「おかや木芸」です。テーブルウェアや家具・インテリアなど、欅や桜、栗などの国産広葉樹を使った暮らしの道具を生産しており、希少な黒柿を使った工芸品は、「島根県ふるさと伝統工芸品」にも指定されています。

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黒柿は人の手で育てられるものではありません。その生育のメカニズムは解明されておらず、柿渋に含まれるタンニンの化学変化とも言われる黒い紋様が現れるまでに少なくとも100年はかかる、まさに自然の奇跡ともいえる産物です。入手自体が困難であるうえ、約5年かかる黒柿の乾燥にも相当のノウハウが必要ですから、黒柿を扱って60年以上の歴史がある「おかや木芸」だからこそ扱える素材と言えます。
自然の奇跡と職人の技がひとつに結実して生み出される見事な茶筒や棗などの茶器たちの佇まいは、不昧公の庇護のもとに繁栄を遂げた出雲の茶の湯文化を象徴しているようです。

伝統を確かに受け継ぎながらも、現代のライフスタイルに合わせたアップデートを続ける出雲工芸の品々は、こだわりを求める中高年男性からの人気も高まりつつあるそうです。
数百年の時を経て世に出る黒柿と同じく、長年にわたって積み重ねられた出雲の文化と技術が、いま新たな価値として鮮やかな輝きを放ち始めています。

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おかや木芸本店では、出雲黒柿のほか、檜や桜などを用いた木製品が多数展示されています。木の香りが漂うショップは、五感で楽しめる体験スポットですね。

おかや木芸Okaya Mokugei

Address
島根県出雲市斐川町直江4844-1
Tel
0853-72-0538
Web
https://www.okaya.ne.jp/

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