大和三山のひとつ畝傍山(うびねやま)を背後に、
荘厳な趣とともに建つのが
日本建国の聖地である橿原神宮です。
今から約2,600年前、
九州高千穂の地より東を目指した
天照大神(あまてらすおおみかみ)の子孫、
神日本磐余彦天皇(かむやまといわれびこのすめらみこと、のちの神武天皇)によって
橿原宮が創建されたことに由来します。
神武天皇東征の道中には、海難による兄たちとの別れ、
熊野山中での遭難など、
幾多の困難が待ち受けていました。
たとえ在地豪族に打ち負かされても再び立ち上がり、
天照大神の加護を受けながら東を目指したのも、
天照大神から継がれた
"人々が、心安らかに豊かに暮らせる国をつくる" という、
揺るがぬ信念があったからこそ。

『日本書紀』が編纂された奈良時代に入ると、
それまでの神への信仰と
飛鳥時代より大陸から伝わってきた仏教文化とが出会い、
多様な広がりをみせはじめます。
いわばこの時期が、日本人の豊かな感性や習俗の
源をつくった時期ともいえるでしょう。
その後、平安の世に移ってもなお、大和は信仰の聖地として、
日本人の心の拠り所であり続けました。

大和を語る際、その栄華の物語に注目が集まりがちですが、
その背後には一国の都を支えられるほどの
豊かな風土があったことを忘れることはできません。
人々の暮らしの糧となった吉野の山々、
清酒発祥にもつながった豊かな水源、
薬草や野菜・果実を育んだ肥沃な大地。
この大和には、“心安らかに豊かに暮らせる国” を
思い描いた古代の人々の心を表すがごとく、
姿形のみに留まらない、
深淵なる魅力がつたっているのです。

1300年前に生まれた日本のチーズ?奈良の伝統食「蘇」と「飛鳥鍋」

「蘇」とは、牛乳を煮詰めて作るチーズのようなもので、薬として扱われていました。日本最古の医学書『医心方』には「蘇は筋力がつき、胆が強くなり、肌や体に潤い、つやが出る」という記録も残っているのだそうです。

職人の遊び心が暑さをさらに和らげる 一生モノの暮らしの道具

奈良団扇は、江戸時代の初めには確立された日本でもっとも歴史ある団扇と言われています。創業160年の老舗「池田含香堂」六代目の池田匡志さんは、同じく職人である母・俊美さんと二人で、老舗の看板を守っています。

心をつたう言の葉を紡ぐ 大和の伝統工芸

和紙や墨、筆などの文具の歴史を紐解くと、大和に深い関係があることがわかります。奈良県吉野地方に伝わる吉野和紙。弘法大師(空海)が持ち帰った毛筆づくりの技法など、多くのゆかりがあることに驚かされます。

伝統を受け継ぐ「漆」をもっと身近に カラフルな漆器で暮らしを豊かに彩る

漆と大和には深い関わりがあり、興福寺にある奈良時代の仏像彫刻の傑作、国宝「阿修羅像」には「脱活乾漆」という漆技術が用いられています。その後、漆工などで発展していった漆技術が、いま新たな形で注目を集めています。

五穀豊穣から、子どもの成長まで 切なる“祈り”を削り出す奈良一刀彫

一刀彫は各地にあれど、「奈良一刀彫」の起源は約880年前の平安時代までさかのぼります。奈良から献上された美しく彩色された盃台。その盃台上を飾ったのが、奈良一刀彫りで作られた能人形であったとされています。

伝統工芸をモダンに進化させる 鹿角を通した“つながり”

奈良のシンボルとも言える鹿の角きりは、江戸時代から今日まで、約340年にわたり受け継がれている伝統行事。その角を熟練の加工技術でアクセサリーに仕上げたブランド誕生の裏には、奈良の地域の人と人のつながりがありました。

栄華を極めた山間の宗教都市 その裏にあった清酒発祥の物語

正暦寺は清酒発祥の地として、室町時代の古文書『御酒之日記』や江戸時代初期の『童蒙酒造記』にも記されています。当時の製法で約500年ぶりに復活した酒母を使い、さまざまな蔵元の清酒として楽しめるようになりました。

応神天皇の時代から受け継がれてきた蚊帳織物を、現代風にリデザイン

日本の蚊帳(かや)生地の歴史は、『日本書紀』に記されている応神天皇の時代までさかのぼります。その伝統ある技術を活かし、高いデザイン性で現代に生まれ変わらせたのが、吸収性と汚れ落ちが特徴の「白雪ふきん」です。

本気で真似ることで、無限の可能性が花開いた赤膚焼

赤膚焼の名工、奥田木白が現れたのが幕末の頃。木白はもともと陶工でなく暮らしに使われる道具類を扱う荒物商。自由な性格で、「諸国焼物模物所」の看板を掲げて全国各地にある焼物をひたすら模倣しました。しかし、その品質は、本家を凌ぐほどだったそうです。

桜と並ぶ日本の象徴 歴史から消えかけた“橘”って、どんな味?

日本円の硬貨にはさまざまなモチーフが描かれています。では、500円硬貨の裏面、数字の両脇にある植物がわかりますか?これこそが、古くから桜と並び珍重されてきた、日本固有の柑橘類である「橘(たちばな)」です。